あなたは、TVなどのニュースで、「心肺停止」という言葉を見た時、どう感じますか?
何故ストレートに「死亡」としないのだろう?と思いませんでしたか?
実は、「死亡」とせずに「心肺停止」とするのには、ちゃんとした理由があるんです。
何故「死亡」ではなく「心肺停止」?その理由について、色々調べてみました。
「心肺停止」の意味とは?基準は?
何故「死亡」とせずに「心肺停止」とするかという理由について知るには、それぞれの言葉の意味を調べてみるところから始めました。
「心肺停止」を辞書で調べてみると、
とあります。
「心肺停止」の基準は、
- 心臓停止
- 呼吸停止
です。
これって「死亡」とは違うの?と思われたのではないかと思います。
「死亡」の意味と基準
「死亡」を辞書で調べると、
「死亡」は日本の民法、戸籍法、臓器移植法などの法令、新聞などのマスメディア上、或いは、人口統計学などの学術などにおいて使用される、人の死という事象を指す用語です。
そして、「死亡」の基準は、
- 心臓停止
- 呼吸停止
- 脈拍停止
- 瞳孔散大
上の4つを医師が診断し「死亡」を宣言、以上の条件が揃って初めて「死亡」とされます。
欧米の「死亡」の基準
また、欧米では「心肺停止」の状態を「死亡」として扱うケースが多いです。
それは、欧米では「死亡」の基準が、三徴候説という診断基準であるためです。
三徴候説というのは、
- 心臓停止
- 呼吸停止
- 瞳孔拡大
を「死亡」の診断基準とするものです。
「心肺停止」と「死亡」の違い
「心肺停止」と「死亡」の基準をご覧になれば、違いがお分かりいただけたかと思います。
何が最も大きく違うか、それは、「心肺停止」には医師の診断がなく、「死亡」は医師の診断を受けて初めて認定される、という事です。
つまり、「心肺停止」の状態、心臓と呼吸が止まった状態で、医師ではない者が、それを「死亡」と判断する事は出来ないのです。
もう1つの違いは、「その状態から蘇生する可能性があるかどうか」です。
「心肺停止」の状態からなら、人工呼吸を行なう、AEDを用いる、などの蘇生措置で、息を吹き返す事は可能です。
しかし、医師が「死亡」と診断した場合は、蘇生の可能性はありません。
なので、「心肺停止」と「死亡」の違いは
- 医師が「死」を診断し宣言しているか
- 蘇生の可能性があるか
この2つの違いについて、覚えておいてください。
心肺停止から何時間が経てば、死亡になる?
実は心肺停止から何もしないで12分経過すればほぼ絶望的になります。成功しても障害が残る確率が高くなるそうです。
心肺停止から心臓マッサージや人工呼吸が行われていれば、救命率は高くなります。
日本国内の蘇生成功の最長時間は長野県で雪崩に巻きこまれた男性が3時間の心肺停止後に蘇生しているようです。
海外で蘇生成功の最長記録は6時間だそうです。
社会死って?
「死亡」は、医師の診断以外で認定されてはいけない、という決まりがありますが、例外もあります。
それは「社会死」です。
「社会死」というのは、心臓停止・呼吸停止・脈拍停止・瞳孔散大などを医師が診断するまでもなく、明らかに死亡している状態を言います。
総務省消防庁発布の「救急活動時における適正な観察の実施について」という資料の中にある「救急業務において傷病者が明らかに死亡している場合の一般的な判断基準」には、
(1) 意識レベルが、300であること。(痛み刺激に反応しない)
(2) 呼吸が全く感ぜられないこと。
(3) 総頸動脈で脈拍が全く触知できないこと。
(4) 瞳孔の散大が認められ、対光反射が全くないこと。
(5) 体温が感ぜられず、冷感が認められること。
(6) 死後硬直又は、死斑が認められること。
以上の全てが該当した場合、とあります。
もっとストレートに言ってしまうと、
- 頭部が胴体から離れている
- 炭化している
- ミイラ化している
などもこれに当てはまります。
こういった状態の死体については、救急隊員は蘇生措置を行なわず、救急搬送もしないで良いとされています。
まとめ
「心肺停止」と「死亡」の違いについて解説させていただきました。
これからは、ニュースで「心肺停止」となっていたら、「あの人はまだ死亡していないんだ。助かるといいな」と思っていただけたら、と思います。